アズールレーン THE ANIMATION

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2019.11.21

シリーズ構成:鋼屋ジン インタビュー第2弾を公開!

シリーズ構成:鋼屋ジンさんへの、アニメ前半episode 01~06の内容を振り返るインタビューを公開!
放送を終えた今だから語れる裏話も満載のインタビューとなっています。
また、アニメ放送開始前に行われた第1弾インタビューもあわせてぜひご覧ください。

――前回、作品の公式Twitterに掲載したインタビューは放映前に収録したものでした。完成映像をご覧になった手ごたえは、いかがですか?
鋼屋 反応を見る限りではいい感じではないかなと思って、とりあえず胸をなでおろしています。ファンの方に喜んでもらえるのが一番ですから。

――視聴者のみなさんの反応を見ていると、アニメになってまず何より驚かれたのは、戦闘シーンのようです。ロボットアニメやヒーローもの的な解釈で、あれはシナリオの段階から意識されていたのでしょうか?
鋼屋 そうですね。昔取った杵柄というか(笑)。擬人化艦船ものをアニメーションとしての表現するとき、たぶん、いちばんハードルになるのが、舞台なんです。作品中、海を描くことが当然多くなるわけですが、海は平坦というか、背景として映り込むような物体が少なくて、変化が乏しい絵になりがちです。それを解決しなければという意識は、脚本を受けたときから自分の中にも、もちろん監督の中にもありました。
解決にはいろいろなアイデアがあって、少女たちが艤装をまとっている状態と、艦船そのままの状態、両方あるのもそのひとつです。原作ゲームでもモブエネミーは大きな艦船のままなので、その点は絵的にも強みだなと思いました。艦船自体がキャラクターとのあいだで大きさの対比を生む存在になるし、背景にもなってくれる。「大きな艦船を小さな女の子が倒す」という構図も、絵としてものすごく映えますからね。

――水平線だけをバックに戦うというのは、なかなか見せ方が難しいですものね。そこを乗り越える工夫が必要だった。
鋼屋 あとは、現実の軍艦らしい戦い方に執着して、戦闘描写が単調にならないようにすることも意識していました。「遠くから大砲を撃つだけ」「戦闘機を飛ばすだけ」になっちゃうと、どうしても画面に動きがなくなる。そこは割り切って、いわゆる“能力バトルもの”のようなスタイルでいいだろうというのは、最初のうちに方針として決めちゃいました。だから空母も前に出てガンガン戦うわけです。

――では、そんなお話の流れで、各話の見どころを振り返っていただこうかなと。まず第1話から。
鋼屋 第1話はもう完全にお祭りで、ホットスタートを切ろうと考えて書きました。とにかく派手で、見たことのない戦いをやろう、と。たいがい自分は、第1話でハッタリをかますパターンにしがちですね。今川泰宏監督の作品などを見て育った世代だからでしょうか(笑)。



――第2話はどうですか?
鋼屋 第2話は、第1話の流れを引き継ぎつつ、それぞれの情勢を描く話数ですね。鉄血の初登場であるとか。それから、エンタープライズがどういうキャラなのかが、少し見えてくる。第2話はほかにも今後の主要キャラが集まってくる話でもあって、ベルファストもここで初登場ですね。放映前にも「エンタープライズとベルファストがコンビになるよ」という話をしていたんですけど、ここでそのコンビが初お披露目されて、キャラたちのいろんな思惑が出揃ってくる。そこを押さえていただくのが、重要なポイントの話数ですかね。

――アクションのみごたえも、第1話に続いてありました。
鋼屋 それでいうと、瑞鶴の必殺技ですかね。あれは脚本の段階で自分が入れたわけではなくて、監督のアイデアなので、自分もビックリしました(笑)。刀にチャージはみどころですよね。

――瑞鶴の強さは印象的でした。
鋼屋 瑞鶴・翔鶴を目立たせるのは原作のYostarさんの要望でもあったんです。「エンタープライズが主人公になるのであれば、瑞鶴はエンタープライズとライバル関係なのでピックアップしてほしい」というお話でした。あとは、エンタープライズがどちらかというとヒーローとしても軍人としても完成されたキャラなのに対して、瑞鶴はまだ成長途中の未熟なヒーローなんです。そこが対比になるなと思いながらセッティングしています。



――やられてプカプカ海に浮かぶフネたちの姿ですとか、コミカルな要素も目立ちます。
鋼屋 コミカルなキャラはちゃんとコミカルに見せようというのは、シリーズ全体での意図としてあるんです。各キャラがちゃんと、自分のキャラに合った行動を取る。これは昔から、それこそ自分が『斬魔大聖デモンベイン』でデビューした頃からなんとなく考えていたことなんですけど、例えばひとりの人間が何か深刻な悩みを抱えていたとしても、まわりのみんなはいろいろな思惑で生きており、全員がシリアスな空気になるわけではないんですよね。空気を読まないヤツもいるし、誰かが場を重く、暗くしようとしても、その思惑に乗らないヤツはいる。違うもの同士の想いがぶつかり合って物語は動いていく。そうした描き方は、常々心がけています。

――では第3話のお話に。ここからベルファストが本格的にお話に絡み出します。
鋼屋 第3話は日常回にすると最初から決めていたのですが、脚本は一番苦戦しました。エンタープライズを掘り下げて、ベルファストと絡ませて何かやるというのは決まったものの、どういうエピソードをやろうかと。で、結果的には、放映されたようなかたちになったわけですが、見どころとしては、ちょうどさきほどお話したようなことが描かれているところですかね。エンタープライズは基本的にまわりとは空気が違うヤツで、悩んでいるんですけど、同じアズールレーンの仲間であってもまわりはまわりで襲撃の後なのに遊んでいたり、やはりみんなそれぞれの気持ちや考えで動いている。それを見せるのは、意識したところでした。



――では、続いて第4話。
鋼屋 アニメ『アズールレーン』をやるなら、アズールレーンVSレッドアクシズをちゃんとやると最初から決めていました。でも当然レッドアクシズはただ倒せばいい敵じゃない、と。だから第4話で重桜の話をやろうというのは、全体プロットを切ったときから決めていました。ただアズールレーンとレッドアクシズは、形としては敵と味方じゃないですか。だから、キャラ同士が交流できるのは、当たり前ですけど戦っているときしかない(笑)。シチュエーションが限られてしまう。できるだけバリエーションを広げようとして、アズールレーンから重桜にスパイを送り込むという展開を考えました。で、スパイものをやる、スパイものといったら、ロイヤルだろう、と。それでメイドのシェフィールドとエディンバラをここで活躍させるかたちになりました。
シェフィールドのスカートの中身は話題になってましたけど、あれはあの設定を知った段階で天衝監督が気に入っちゃったので、第6話から逆算する形で、ここから伏線を張ることにしました(笑)。赤城が隙をつかれて黒キューブを奪われるというプロットは最初の案からまったく変わっていないんですけど、結果的にシェフィールドのスカートの中身に驚いたせいになってしまって、なんだかめちゃくちゃ面白いシーンになったのは、計算外でしたね(笑)。



――では第5話です。
鋼屋 ここでもう一度、綾波とラフィー、ジャベリンを顔合わせさせる展開を考えていて、そうなるとまた戦場で向き合うしかないので、前回からの続き、追撃戦というかたちで無人の島を舞台に互いの勢力がぶつかり合うという流れにしました。もうひとつのポイントは、海ではなく、水没した廃墟のような島で戦うことで、戦闘のシチュエーションに変化を付けることですね。その上で、ちゃんと艦船モード同士の撃ち合いをやろう、と。これまで対人戦の要素が強かったので、ここでは艦隊戦を見せたいと思ったんです。少しだけタクティカルな雰囲気を味わってもらえたらなと。
脚本は文字だけなので誰がどこで何をしているのか、位置関係がわかりにくくなるので、打ち合わせでは時間ごとのマップを別に起こしました。結果的にアニメ版における艦船たちの戦い方がイメージしやすくなりました。まず船の状態で出撃して遠距離からの撃ち合いが始まり、戦況が進むと艤装モードになった少女たちが敵陣に突っ込んで白兵戦を行うという、一周回って大航海時代みたいな戦い方をしているじゃないのかな、と。



――第4話、第5話では明石の弾け方が目立ったような。
鋼屋 明石は、アズールレーンと合流させたいという意図があったんです。それというのも、第3話あたりから実はちょっとずつ描いているんですけど、あの世界の基地ではいろんな文化が少しずつ入り混じっていくんです。そこを見せるのは裏テーマなんですよね。第3話だと、ユニオンとロイヤルは食べるものが違って、同じ基地にいても同じものを食べてるわけではなくて、それなりに自分たちの好みに合わせた食べものを用意している。ちゃんとそれぞれの陣営の食事が揃っている。第3話が終わると、さらに平海・寧海がやってきて中華まんを売るようになり、さらに明石が加わると、彼女が勝手に商売を始めるのでさらに多国籍になる……みたいな。そこらへんの、多国籍な状況でどの勢力とも上手くやるポジションとして明石は活かしたかったんです。それで第4話・第5話では狂言回し的に動き回ってもらいました。動かしやすいキャラでもありますしね。



――文化交流は本作の面白いポイントですよね。序盤にもコーヒー党か紅茶党か、みたいな話がありました。
鋼屋 あれはもう、ユニオンとロイヤルの象徴です(笑)。

――エンディングも食事シーンですし。実は本作の裏テーマだったとは。さて、そして大サービス回な第6話です。
鋼屋 この回も全体プロットで日常回だと決めていたんですけど、お風呂回っていうのはどの段階で決まったんだったかな? 結局、天衝監督がやりたかったんじゃないかなっていう気がする(笑)。大喜利みたいな感じでアイデアをみんなで出していく中で、お風呂のネタを採用することになったのと、ユニコーンの胸の話題について監督がものすごく反応して……お風呂回でそのお話をやることになりました。共同で脚本を担当していた大樹(連司)くんが、監督のこだわりを受け止めるのに苦労してましたね(笑)。

――ユニコーン愛の溢れる展開は監督のこだわりだったんですね。
鋼屋 全体プロットの段階では、黒キューブがアズールレーンに渡ったので、それを調べることが今後の大きな展開に繋がる、嵐の前の静けさみたいな日常回にする……というような内容だけが決めてあったんです。だからアズールレーンとレッドアクシズ、両方の基地を描いて、日常をちゃんと見せる。で、そこからアイデアを出すうちに、ユニコーンの胸に天衝監督がこだわり、さらにシェフィールドのパンツの話も盛り込まれ……と(笑)。



――何が監督をそこまで刺激したんでしょう?
鋼屋 ユニコーンの胸のコンプレックスの話は、打ち合わせの中で、Yostarさんが裏設定として「ユニコーンは実際は胸が大きいです」とおっしゃったんですよね。シェフィールドのパンツの話もそう。で、胸がコンプレックスなのでゆーちゃんで隠してると言ったときに、何かが監督の琴線に激しく触れたみたいです(笑)。それで、そこに触れるんだったら「みんな違って、みんないいよね」という話をやろうと思ったわけです。一つ前の話題とも繋がるんですけど、あの基地の中がどんどん多文化になっていくのと一緒で、ある種の多様性が基地の中に実現していく。その中に、体型というテーマがあってもいいよね、と。

――裸が筋肉まで細かく描き分けられていましたが、そういう意図だったんですね。それをサービス精神も込めつつ見せた、と。
鋼屋 サービスシーンではあるけど、そういう普遍的なテーマも盛り込んだつもりです。



――では、ここからはこの先の展開、第7話以降の見どころもお聞きしたいです。ストーリーの軸はいくつかありますよね。いちばん大きいのは、エンタープライズとベルファストの関係かなと。
鋼屋 後半の話数では、エンタープライズに大きな転換があります。問題にぶち当たるのですが、無論、エンタープライズひとりでどうにかなる問題ではなく、なんでもひとりでどうにかしようとする人が、その状況にどう立ち向かうのか。あと、第1話から割と繰り返し強調している「戦いはいつの世も変わることはない」というテーマが、エンタープライズにとっては大きな課題なんですよね。「自分たちはセイレーンと戦うために作られたのに、結局、人類同士の戦いに使われるのか」という葛藤がエンタープライズにはある。そしてそれは、実はほかのみんなも、重さの違いはあれど抱えている問題なんです。エンタープライズがいちばん重く受け止めているだけで。それをどう乗り越えていくのかがひとつみどころですかね。

――そこにベルファストが絡む。ベルファストのエンタープライズとの距離感は、いいですよね。
鋼屋 メイドの距離感ですよね。ものすごくぶっちゃけた話をすると、某アメコミヒーローの執事をイメージしています。従者なんだけど、主人に皮肉をいうような関係。いいたいことをビシビシと伝える。ああいう距離感が好きで。一歩下がって付き従ってはいるけれど、実は自分の主張を譲るわけではないみたいな。そういうところがエンタープライズの性格と噛み合って、足りないところを補えるのではないかと考えています。



――そしてもうひとつの軸が、ジャベリンとラフィーと綾波です。ふたつの陣営に分かれてしまっている3人が、今後どうなるのか。ジャベリン・ラフィーは第6話で改めて「仲良くなりたいんだ」と思いを再確認しましたが。
鋼屋 艦船たちはみんな、実はお互い、戦っている状況を「違うよね」「変だよね」と感じながらも、「でも仕方ないね」と思っている。ジャベリンもそこで悩む子なわけです。少しでも顔を知ってしまった相手と戦うのは、現実でもすごく難しい、やりづらいことだそうで。その「気まずいな」という気持ちの先にあるものを、ラフィーは一歩進んで分かっているんですね。そもそも戦いたくないでしょ、と。空気を読もうとしない子だから、みんな感じていても言えないことが言える。最初に気づく。
それでいうと、実はエンタープライズをはじめ、ほかの艦船たちが抱えているテーマに、最初に直面し、一番先に答えを知るのが、子どもである彼女たちなんだという話なんです。ベタといえばベタな発想なんですけど、世の中の真理に一番先に辿り着くのは、タロットカードで言うところの「愚者」、たとえば子どもであると。何も知らないがゆえに何も恐れないから、実は誰よりも早く真理に辿り着けるのではないか、だからこそ子どもというのは希望である……と。もちろん、彼女たちは厳密な意味では人間ではないし、厳密な意味では子どもではないんですけれど、メンタリティとして、あとはテーマとしてそういうものを背負っている象徴ではあるので、そうした点を後半は見てほしいですね。



――もうひとつ動向が気になるのは赤城と加賀です。第4話で明石が思わぬものを見てしまったわけですが、あそこからどうなる? と。
鋼屋 第6話でみんな薄々気づいていると思うんですけど、原作のファンであればご存知の通り、そのふたりに天城というキャラクターが関わってくる話になってきます。ひとことでいえば赤城・加賀・天城の三角関係の話になっていくんです。

――そちらはそちらで、ディープなドラマが展開されそうですね。今名前を出したキャラ以外で、第7話以降の注目のキャラクターは?
鋼屋 ……原作ファンには名前を出すだけでネタバレになるけど、アークロイヤルかな(笑)。第3話でも実は後ろのほうで見切れているんですけど、まあ、その、想像通りのいい動きをしますよ。ネタ要員として(笑)。ドラマとしては、今名前を出してきた、メインキャラのものが大きく動いて行きます。あとは「姉妹」という要素がもう少し前面にでるのと、ついに原作ゲームの敵役であるセイレーンが動くところが、後半戦のポイントですかね。セイレーンの各キャラの活躍も、楽しみにしてください。第1話に1カットだけ出ていた、みんな大好きな「彼女」もちゃんと出ますよ!



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